後腐れなくお別れがしたかったのか。繋ぎ止めて欲しかったのか。好きな気持ちを思い出したかったのか。諦めたかったのか。諦めたくなかったのか。
今となってはあの日あの時私自身がどんなことを考えていたのか思い出すことができない。気持ちを書き留める癖もなくなり、いつからか自分の気持ちが宇宙に散り散りになってしまったようで、ただ私は両手を彷徨わせて空を掴むことしかできなくなってしまっていた。
ジャニーズJr.解体の噂がどこからともなく流れてきて、じわりじわりと首を絞められるような日々が続いていたあの頃ですら、私は私の悲しみや怒りにまっすぐ向き合うことができなかった。実際には悲しんでいたし、怒っていたし、やるせない気持ちでいっぱいだったような気もするけれど私はどうにも昔から真っ直ぐに感情を曝け出すことが苦手なのだ。今や当たり前のように流れてくる罵詈雑言を機械的にスクロールするように、自分の心の声に気を留めることなく毎日を過ごしていた。
一度だけ、昔からの友人とお酒を飲んだ時に「美少年のデビューCDが欲しかった。」とこぼしたことがあった。紛れもない本音だった。運命で結ばれた6人でデビューしてほしかった。美少年の大昇くんが好きだった。6人の中にいる大昇くんが、キラキラ衣装に身を包んだ大昇くんが、王道アイドルを突き進む大昇くんが大好きだった。
だからKEY TO LITのライブが発表されたとき、どうしたらいいのかわからなくて途方に暮れていた。新しいグループで歌う大昇くんをこの目で見たいはずなのに、見たくない。綺麗な思い出を綺麗なままで終わらせたい。新しいページをめくってしまったらもうきっと戻れない。でも、大昇くんが前に進むと決めたのなら、やっぱり一緒に進みたい。
最終的には私の目で見て、感じたものが答えだと、そう信じる他なかった。
制作解放のメールに気付いて流れるように応募した。考えたら手が止まってしまうと思った。10月4日昼公演、私の席は用意された。
久しぶりに見た大昇くんはあっけないほど、思い出のまま、いやそれ以上に光続けていた。大昇くんの一挙一動に目が、心が吸い込まれる。
やはり始めは、衣装や会場の装飾やゴリゴリの曲たちやグループの雰囲気に私の心が馴染まなくて、少し苦しくて、息が詰まるようだった。
でも、白いタンクトップにデニムでステージを駆け回る大昇くんの魂がこれでもかと光っていて、内側が爛々と光ってるのが見えて嬉しくなった。スパンコールの鎧こそがアイドルの戦闘服だと思っていたし、キラキラの衣装で歌う大昇くんが大好きだった。でもきっと、この男の子は例え草っ原でも砂漠でも崖の上でも星みたいに、誰かを導くために、目印になれるように輝くんだ。
目にはらりとかかる柔らかい前髪やまんまるの後頭部、遠い席に届くように懸命に振る手、優しい笑み。かつてスパボに見た命を削って踊る姿。歌を大切に歌い紡ぐ姿。
変わってしまった、と思い込んでいた私はなんて愚かだっただろう。歩んできた歴史を内包して、養分にして、血肉にして、またステージで命を燃やしてくれている。それを目撃できたこと。そんな幸せなことって他にない。
雪白の月、懐かしさとともに歌詞が一段と沁みて、心が痛いのは愛していたからなんだなって他人事みたいに思っていたら、2019の夏を象徴する曲に心臓を押しつぶされて、あ、と思った時には君の姿は滲んでいて駄目だった。
止まらない涙と裏腹に、しんと冴えた脳内で理解する。これはお別れの儀式だ、と。こどもみたいにひとしきり涙を流した後は、がんがん低音が響くコンサート会場で泣いている自分が急に馬鹿らしくなってちょっぴり笑えた。
食道の奥にずっと引っ掛かっていた塊を私は飲み込めたのだろうか。きっとまだそれはわずかに残って貼り付いていて、ふとした瞬間にチクチクと痛みだす。
5人の中で無邪気に笑っている姿を見ると。ボケを拾ってもらって、煽られて煽り返して、けらけらと心底楽しそうに笑ってる姿を見ると。
自由に羽を伸ばしている姿を見ると。自由に見えれば見えるほど嬉しさと同時に苦しい気持ちにもなった。
あの日々はなんだった?本当は嫌だった?未来を信じられなくなっていた?
私の心のどす黒い部分がぐるぐる、ぐるぐる渦を巻いて歯の奥がぎりぎりと鳴って、どうしようもなくなってしまう。
きっとしばらくこの腫瘍と付き合っていかないと行けないと思う。今まで無視していた、なかったことにしていた、見たくなかった嫌な感情。
でもこれを抱えて歩いていく覚悟もできた。完全に手放して違う道を楽しく進むこともできたと思うけれど、ここ数年は実際にそうしてきたけれど、あんな風に精一杯言葉を届ける大昇くんを見てしまったから。期待や夢や希望や情熱をはらんだ瞳で空を見上げる大昇くんを見てしまったから。
まだ乗り越えられたわけではないし、過去を振り返って苦しくなることもあるだろう。
でもやっぱり大昇くんが大好きで、大昇くんの広い背中を追いかけたくて、大昇くんの夢が叶う瞬間に立ち会いたくて。
悲しみも寂しさも全部抱きしめて君と歩いて行こう。そう思わせてくれてありがとう。
真ん中の、一本道を端から端まで全力疾走する大昇くんが好きだ。大きい会場でしか見られない姿。流れ星みたいだった。消えないで、いつまでもここにいて。
いや、そんなんじゃなくて、やっぱり願いたいことは、『大昇くんの夢が叶いますように!』
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