それは祈りのような

すきなこのことをすきかってに

終わらない夢を描こう

劇中で何度もリフレインするこの一節が否応なく涙腺を緩めていく。ボクシングを題材にしたこの舞台が長年わたしたちの心を掴み虜にし、こうして伝統として続いているのは夢を追いかけるボクサーの卵達がどこか、いつも応援しているあの子に重なるから。どちらが前かわからなくてもとにかくがむしゃらに光の射す方へ、だれかのためを想って、だれかを守るためにただ突き進むあの子の姿に重なるから。夢を追い続ける17歳の岩﨑大昇くんは怒涛のあの夏を駆け抜けながら、この舞台と向き合い、さらにひとまわりもふたまわりもアイドルとして、役者として成長した姿を見せてくれました。2019年 舞台「DREAM BOYS」の備忘録です。

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ふと気がつけばあんなにも夏を騒がせていた蝉の声は心地よい鈴虫の声に変わり、頬を撫でる風は都会の喧騒に疲れた心をさらりと乾かしてくれるような秋風へと変化していた。あんなに愛していた夏はもう終わったのだということを肌で感じながら新たな心持ちであの赤絨毯を踏みしめる、ずっとずっと大好きな帝国劇場。

帝国劇場の柱に一際大きく貼られた大昇くんのお顔は、夏に演じていたロクちゃんの面影はどこへやら。ワイルドに髪をかきあげ、キリッとした眼差しでまるで別人のよう。これは日比谷の観光名所だ、新たな待ち合わせスポットだ、世界遺産に登録するべきだ〜〜!などと真剣に思いながら毎回心の中で合掌してしまうほど。グッズたちもびっくりするほど"タイショウ"の顔していてオリフォを開けて1枚1枚めくるたびに毎回息が止まっていた、あまりに男すぎて…夏の始まりに大昇くんのお顔が変わって、次々に出るお写真たちを見て、恐らくこの子は憑依型の俳優だ…と思っていたのですが今回それが確信に変わりました。

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タイショウは神宮寺勇太演じるジン、もといチャンプのジムのNo.2。チャンプの一番側で背中を見て、追いかけて来た人。誰よりもチャンプを信じていて、慕っていて、忠誠を誓っている。そんな人物像が客席のわたしの手の中にはらはらと落ちてきた。ステージと客席という物理的な境界を飛び越えて、大昇くんの演技はまるで小説を手に取って自分でページをめくるようにありありと感情が届いてくる。



つよさとはやさしさであること。
優しい人は強い人。

17歳の大昇くんはそのぼやけた真実を、その身の隅々から、確かな温度として、振動として、光として客席のわたしへと届けてくれた。まるで中の人なんていないかと錯覚するようにわたしはすぐにタイショウという男の子を凄く凄くすきになったし、どうしてもタイショウに傾倒して舞台を見てしまったな。一回くらいちゃんと俯瞰で舞台見せてよ〜〜!って思ってしまうくらい魅力的で感情移入せざるを得ないキャラクターでした。

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ユウタがボクシングで決着をつけようと提案した時の片方の口角だけをくいっと上げてほくそ笑むタイショウ。チャンピョンベルトを誇らしげに掲げ、目を爛々とギラつかせて歩く姿。試合の序盤、チャンプが勝つことを1ミリも疑うことなく静観し、相手を煽る姿。時にあざ笑うようなこともあったね、勝ちが確定している試合が可笑しくてたまらないような。

あぁ、この人はチャンプが勝つことを心から信じているのだ。1ミリも疑っていない。チャンプの強さを、今までの積み重ねを一番近くで見てきたからこその佇まいなのだと説得力のある演技だった。

タイショウはチャンプの強さはもちろんのこと、その人柄を尊敬していて愛しているのだ。それはタイショウが大きな声を出す、苛立つ、思わず手が出る、そんな場面から痛いほど伝わってくるようだった。



いつもの大昇くんと全然印象が違ってすごく怖かったのだけれど、でも、その中からきちんと愛がこちらに届いていた。きっと大昇くんは"怒り"の裏にあるタイショウの感情としっかり向き合ってその上で演技していたんじゃないかな。

"怒り"の裏には必ずきっかけとなる感情があって。

例えば鉛の板のことが発覚したときやリュウガが刺されたとき。仲間が傷付けられたことの悲しみ、守れなかった悔しさ、不甲斐なさ。落胆、焦り、心配。

視線のひとつから、片方の口角から、傾げた首から、荒げた口調の端っこから、震えた拳から、チャンプや仲間への愛がポロポロと溢れていました。タイショウの大きな声は、強い身体は、誰かを守るためのものだったんだよね。

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だから余計に"タイショウ"自身の、自分のための感情は抑え込んでることが多くて、そこがより一層切なさを産んでいたとわたしは思っていて。

例えばチャンプがユウトにグローブを渡すシーン。部屋に入ろうとするソウヤを制止して外からそっとその様子を見守る、目を伏せる、表情が翳る、唇を噛む。その次の瞬間にはわざと少し明るく、苦しくなるほど優しい声で「チャンプ」と呼ぶ。

‪チャンプ倒れ、リュウガが刺されて、仲間を守れなかった悔しさや歯がゆさで心臓がはち切れそうなタイショウが、大きな声を出して必死に必死に走ってユウタを探し回っていたタイショウが、やっと目を覚ましたチャンプに「グローブに鉛の板を入れてたんだよ、」って子どもみたいな切実な声で訴えるの、あぁ、今まで気を張っていたタイショウの心の糸が少し緩んだのだな、と伝わってきてポロポロないてしまう。‬

‪そしてそのあとのリカさんが黒幕だとわかるシーンではさらにタイショウの年相応の子どもらしさが見えて、もう困惑が隠しきれなくて、眉を下げて泣きそうな顔で頭を振って、"わからない、わからない、たすけて"ってタイショウの声がここまで聞こえてくるようで切なかった。‬


口から出なかった言葉たちが、この世界に形として生み出さなかったタイショウの感情が切なくて苦しくて、ねえだれがタイショウのこと抱きしめるの?って何度も何度も思っていた。


‪"ユウトの手術、成功した…!"のシーンは喜びと悲しみが混ざり合ってぶつかって人知れず必死に戦っていて、その広いはずの背中が弱々しく見えた。真顔で一点を見つめて呆然としているようにも見えたけど、でもぐっと涙を拭いて、悲しみを乗り越えて次のシーンでは上を向いて微笑む。特にセリフはないけれどタイショウが大きく成長したことを、大きな一歩を踏み出したことを感じ取れるとてもだいすきなシーン。なんだかジャニーさんと夏の彼らにも重なる部分があるな、なんて思ったりしていた。‬


‪(でも私はタイショウよりも精神年齢が子どもなので、ユウトにだいすきなチャンプのグローブも心臓も取られちゃって、こんな弟が欲しかったとかユウトが未来のチャンピョンになる日を楽しみにしてるとか、そんなこと言われちゃってタイショウが可哀想すぎるよ〜〜!!って毎回思っていたことはタイショウにも大昇くんにも内緒ね)

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「生きている」と何度も思いました。タイショウがそこに生きている、と。少しもわざとらしくなく、表情の微細な変化で感情を表していて、相手の台詞にきちんと呼応して。あの目が回るほど忙しかった夏に、ここまで役を落とし込んで、立ち位置を覚えて、ダンスやアクロバットの練習をして、自信に満ちた表情でステージに立つ。

今回わたしは中日以降しか観劇できなかったのだけれど、でも、大昇くんは全く演技に隙がなく、集中力が途切れることなく、最後まで丁寧にそこに生きていてくれて、改めて心底大昇くんってすごいアイドルなんだっておもった。




いま振り返ってみるとこの舞台は、"アイドル 岩﨑大昇"がトップスターへの夢を叶えるための生き様そのものだったような気がしています。


ダンスのスキルが、役に合わせて少しけだるげに、でも力強くキレが増していて、またぐっと上がったね。緩急。指先の表現が上手になった。踊っている時、歌っている時の表情はもうなんて言ったらいいのか言葉が見つからないほど。役に入り込んでいた、というよりは、やはり、タイショウが生きていたという感覚。


そしてDREAMERの登場で突然披露したバク転。全くバク転を練習してるっていうことを匂わせずにいきなり舞台でやっちゃうところが大昇くんらしいなあ。いつかの雑誌で"努力しているところは見せずにファンの人には完成形だけを見せたい"と話していて、そういう健気で努力家な意識が本当に大好きで、応援し始めてからいままで見てきた大昇くんはずっと有言実行/不言実行の男の子だったので、その芯のブレなさにまた何度でも惹かれてしまう。



そこに居てくれるだけでいいって思うけれどそれ以上のものを届けてくれる大昇くん。アイドルを応援しているつもりで支えたいと思って会場に足を運ぶけれど、いつも支えてもらっているのはわたしの方だったな。

‪大昇くんの感性を心底愛しているし、仕事に対する姿勢を信頼しているから例えば多くの人が失望するようなことがあったとして、わたしはこの心の中に蓄積された宝物がある限りきみに失望することはないとおもう。わたしが観てきたものは、感じてきたものは絶対間違いじゃないって確信している。嘘なんかじゃない、まぎれもない真実だった、そんな気持ちをより一層強くした1ヶ月だったよ。‬

‪大昇くんの素敵な魅力がどんどん色んな人に伝わっていくのが実感としてわかったし、それは全部全部きみが積み上げてきた努力の結果だと思うし、そんな大昇くんを応援できていること、歴史的な瞬間に立ち会えていることが本当に幸せだと思う。こんな素敵なカンパニーでWゆうたの精悍な背中を見ながら、光一くんに演技指導してもらって、って環境にもとても恵まれたよね。‬

大昇くんはわたしの心配や期待やたのしみを軽々と飛び越えてすごく高いところで笑っている男の子だから、ケガしないかなとか無理してないかなとか勝手に心配してしまうのは許してほしいけれど、あ〜〜やっぱりすきだな、強い芯のある大昇くんが。

いつかチャンプ役の大昇くんも見たい。帝劇の0番で一際豪華な衣装を着て堂々と立つ姿も見たい。Shockも出演できたらいいな、というかできるよ、大昇くんの描いた夢は、絶対絶対叶う。行きたいところに行けるよ。なりたい人になれる。だって何事にも真剣にひたむきにまっすぐに取り組む大昇くんだもん。いつでも自分の夢をわたしたちに教えてくれる大昇くんだもん。



着いて行くだけで精一杯だったこの夏〜秋の大昇くんの凄まじい成長は、もちろん大昇くん自身の夢のためであって、全速力で駆け抜けたその日々と気概を本当に心から尊敬しているのだけれど、実はそれは美少年のメンバーのためでもあったことを知って、あ〜〜もう敵わないっておもった。この男の子にわたし一生敵わない。だからそんな歌がうたえるのね、だから、そんな風に走っていけるのね。


出会えてうれしい、それに尽きる。怖いくらいにそう思う。わたし大昇くんが居なかったら今頃何に感動して涙を流していたのだろう。何に怒って何に笑っていたのだろう。想像するだけで、ちょっぴりこわいね。

ずっとずっときみがすきな場所に居られたらいいなと思うし、それがステージの上であったらわたしはとてもうれしい。でも、いつか、そうじゃなくなった日が来ても、きみの幸せを祈っている。そんな自分でありたい。









ショータイム最後の晴れやかな満面の笑顔が、心からの岩﨑大昇くんの笑顔だったらいいな。そしてこれからもずっとずっと、ステージに咲くその笑顔を見に行けたらいいな。



ステキな秋をありがとう。本当にお疲れ様でした!